てんかん

EEG Course 6 週目 薬物療法 レベチラセタム(イーケプラ)が使いやすい理由と注意点

 

EEG Course 6 週目は薬物療法についてでした。

一番驚いたのは、アメリカは抗てんかん薬の承認が早く、種類が豊富なことです。

なんと、カルバマゼピンは第三世代まであります。

レベチラセタム(イーケプラ)も第二世代のBrivaracetamが発売されています。

とても驚きました!

 

一方で、日本ではレベチラセタムがようやく一般的になったと思います。

その中で、

なんでそんなに使われてきているの?

レベチラセタムを良く使っているけど、どこに注意したら良いのだろう?

という疑問があると思います。

今回はその疑問点注意点をメインに解説します。

 

要点まとめ

  • レベチラセタムは広く早く効き、相互作用と副作用が少ないため使いやすい
  • 重篤な副作用は少ないが、精神症状、行動障害に注意する
  • クレアチニン・クリアランスを基に用量を決定する
  • 重篤な肝障害では半分量にする
  • 小児と超高齢者では用量が異なる

レベチラセタムが使われてきている理由

 

理由① 広く早く効く

最初の理由は、レベチラセタムはBroad Spectrumかつ早く定常状態に達するからです。

例えば、小児では部分発作やミオクロニー発作、成人では部分発作が第一選択薬となり、他の抗てんかん薬と同等の効果を持っています。

 

小児の適応 1)

第一選択は、部分発作ミオクロニー発作若年ミオクロニーてんかんBenign Focal Epileptiform Discharge of childhood, Panaiotopoulos症候群、遅発性小児後頭葉てんかんです。

 

成人の適応 2)

部分発作(二次性全般化を含む)ミオクロニー発作で第一選択薬です。

全般性硬直間代発作はバルプロ酸の方が治療成績が良いので注意が必要です。

 

痙攣重責の適応 3)

ガイドラインの改定で痙攣重責時の第二選択薬となりました。

ホスフェニトインと同等の効果があります。

 

半減期が短い 2)

半減期が約8時間のため、2日弱で定常状態に達成します。

そのため、他の抗てんかん薬よりも早く安定した効果が得られます。

さらに初回負荷もいりません。

 

理由② 相互作用が少ない

次の理由は、相互作用が少ないことです。

CYP450に作用しない

肝臓の代謝酵素CYP450を介さないため、他の薬との相互作用が少ないです。

例えば、カルバマゼピン、フェニトインなどはCYP450の誘導体のため、他の薬物の血中濃度を下げてしまいます。

さらに、バルプロ酸のようにCYP450を阻害する抗てんかん薬は、他の薬物の血中濃度を挙げてしまいます。

そのため、CYP450を介さないというのは非常に使いやすい点です。

 

蛋白に結合しない

レベチラセタムは蛋白に結合しないため、血中の蛋白濃度に依存せずに効果を発揮します。

何故なら、他の抗てんかん薬は蛋白に結合する場合が多く、血中の蛋白濃度に影響を受けやすいからです。

ちなみに、抗てんかん薬は遊離型のみ効果を発揮します。

一方で、測定される血中濃度は結合型と遊離型の両方になっています。

つまり、測定される血中濃度が安定しているように見えても、低蛋白血症では遊離型が増えて抗てんかん薬が効きすぎてしまう場合があります。

 

理由③ 致死的な副作用がほとんどない 2)3)

 

レベチラセタムは、他の抗てんかん薬のような重篤な皮膚障害、重篤な肝障害、低Na血症、好中球減少はほとんど生じません。添付文書では頻度不明で記載があります。

今までの小児と成人の二重盲検比較試験を解析した2015年のメタアナリシスでは、皮膚障害で優位な差はありませんでした。

注意すべき点

上記のように使いやすいため、深く考えずに投薬している場合があるかもしれませんが、注意点をしっかり学んでおきましょう。

なぜなら、精神症状を来しやすく肝腎障害時・年齢で用量の調整が必要だからです。

注意すべき副作用

注意すべき副作用は、精神症状行動異常です。

一方で、上記で述べたように重篤な皮膚障害、肝障害、低Na血症、好中球減少はほとんど生じません。

 

抗てんかん薬の中でレベチラセタムが最も精神・行動障害をきたす 4)

 

抗てんかん薬を新規に開始された4085例の一年以上の経過の中で,レベチラセタムの精神・行動障害合併率が22.1%と最も多かったのです。

最も合併する行動障害が易怒性17.2%,精神症状がうつ症状7.3%でありました。

そのうち,耐えられない易怒性は9.8%, うつ症状は6.1%でした。

 

レベチラセタムの精神症状は投与一カ月以内に生じやすいが長期的にも生じる 5)

臨床試験のシステマティックレビューの1393人の経過(中央値7.4年)で,レベチラセタムの精神症状は投与直後に生じやすいことが分かりました。

しかし、12ヶ月後にも発症するため、注意が必要です。

 

女性、高齢者、精神病患者はレベチラセタムの精神症状を来しやすい 6)

 

初めてLevetiracetamを開始された患者群1173例を後ろ向きに解析したCohortからレベチラセタムの精神症状リスク因子と予測モデルがあります。

リスク因子は、女性例 OR 1.41[0.99-2.01]、高度な社会的剥奪の経験 OR 1.15[1.01-1.31]、うつ病既往 OR 2.20[1.49-3.24]、不安神経症既往 OR 1.74[1.11-2.72]、麻薬使用(快楽目的) OR 2.02[1.20-3.37]でありました。

予測モデルでは,女性, うつ病, 不安, 麻薬の4つのうち、リスク因子0では8%,
1項目では11-17%、 2項目では17-31%,、3項目では30-42%、全リスクを認める場合は49%で精神症状をきたします。

 

クレアチニン・クリアランスを基に用量を決める 2)

クレアチニン・クリアランスを基に用量を決めます

なぜなら、腎排泄が60%程度のため、腎障害時に血中濃度が上がりやすいからです。

重篤な肝障害またはChild-Pugh Cでは半分の用量にする 7)

重篤な肝障害またはChild-Pugh Cでは推奨量の半分が推奨されます。

なぜなら、重篤な肝障害またはChild-Pugh Cではクリアランスが半分になるからです。

一方で、軽度から中等度の肝障害ではクリアランスは変わらず用量の調整はいりません。

 

血中濃度を測定すべきか 8)

基本的に血中濃度を測定する必要はありません。

しかし、Uptodateでは下記の場合に測定を勧めています。

  • pregnancy
  • renal insufficiency
  • concomitant use of enzyme-inducing drugs
  • to assess adherence to treatment to document the level at which seizure control is achieved or the level at which significant adverse events occur.

 

小児と超高齢者では用量が異なる 2)9)

<小児>

4歳以上の小児にはレベチラセタムとして1日20mg/kgを1日2回に分けて経口投与します。

なお、症状により1日60mg/kgを超えない範囲で適宜増減しますが、増量は2週間以上の間隔をあけて1日用量として20mg/kg以下ずつ行います。

ただし、体重50kg以上の小児では、成人と同じ用法・用量を使用できます。

<超高齢者>

Uptodateでは、85歳以上125㎎ 1日2回から開始して、1日500㎎で治療できることを目標としています。

一方で、85歳未満の健康な高齢者であれば250mg 1日2回でも可能としています。

日本では、85歳未満でも250mg 1日2回で開始していることがあるのではないでしょうか。

 

 

要点まとめ

  • レベチラセタムは広く早く効き、相互作用と副作用が少ないため使いやすい
  • 重篤な副作用は少ないが、精神症状、行動障害に注意する
  • クレアチニン・クリアランスを基に用量を決定する
  • 重篤な肝障害では半分量にする
  • 小児と超高齢者では用量が異なる

 

<文献>

1)てんかん診療ガイドライン2018 医学書院

2) イーケプラ添付文書

3) Alberto Verrotti et al. The adverse event profile of levetiracetam: A meta-analysis on children and adults. Seizure 31(2015)49-55

4) Chen et al. Psychiatric and behavioral side effects of antiepileptic drugs in adults with epilepsy. Epilepsy & Behavior 76 (2017) 24-31

5) Cramer et al. A systematic review of the behavioral effects of levetiracetam in adults with epilepsy, cognitive disorders, or an anxiety disorder during clinical trials. Epilepsy & Behavior 4 (2003) 124–132

6) Josephson CB et al. Prediction Tools for Psychiatric Adverse Effects After Levetiracetam Prescription. JAMA Neurol. 2019;76(4):440-446

7) Chanin Wright et al. Clinical Pharmacology and Pharmacokinetics of Levetiracetam. Front Neurol. 2013; 4: 192

8) Tina Shih et al. Seizures and epilepsy in older adults: Treatment and prognosis (https://www.uptodate.com/contents/seizures-and-epilepsy-in-older-adults-treatment-and-prognosis#H1212462070) last log in 08/12/2019

9) Steven C et al. Antiseizure drugs: Mechanism of action, pharmacology, and adverse effects. (https://www.uptodate.com/contents/antiseizure-drugs-mechanism-of-action-pharmacology-and-adverse-effects?search=levetiracetam&source=search_result&selectedTitle=2~84&usage_type=default&display_rank=1#H2881889370) last log in 08/12/2019