渡米して1ヶ月経ちました.
結論から言うと,アメリカでてんかん診療を学ぶために一歩を踏み出して本当に良かったと思います.
なぜなら,脳波とてんかんを学ぶ素晴らしい環境があるからです.
しかしながら,様々なトラブル,クリアすべき課題,先行きの見えない不安,もあります.
それでは,良い点と問題点を振り返ります.
Contents
脳波とてんかんを学ぶ素晴らしい教育
EEG/Epilepsy Courseは非常に充実して密度の濃い教育を提供しています.
すなわち,脳波とてんかんの基礎を学ぶのに最適な環境です.
教育プログラム
EEG/Epilespy Courseのプログラムは,基礎から応用までみっちり学べる大変素晴らしいものです.
具体的には,2ヶ月間,脳波の読み方,小児から成人のてんかん,てんかん外科を学ぶプログラムです.
そして,現在のてんかん診療を築いたLuders先生を初めとした第一線で活躍される先生方から学ぶことができます.
特に脳波の基礎的な見方がかなり勉強になりました.
しかも,無料なのです.
2ヶ月間,体系立てててんかんと脳波を濃密に学べる環境は日本はありません.
一緒に学んでいる日本の脳神経内科の先生も,日本ではこのように学べるところは無いと言っていました.
私はほぼ独学で学んでいたため目から鱗でした.
恥ずかしながら,脳波のことを正しく理解していませんでした.
今後,以前の私のように学べる環境にいない方々に役に立ちたい思います.
具体的には,USMLEの勉強が落ち着いた来年の夏から,このブログとYoutubeで,分かりやすく基礎から学べる脳波の見方をUPしようと思います.
宿題と試験
医学生の試験期間中のような毎日を送っています.
なぜなら,毎日の復習,読むべき資料に加えて,毎日2題の宿題,中間テスト,期末テストがあるからです.
宿題を通じて,自分が間違ったことを根拠を持って教えてくれるので,大変勉強になります.
今までは脳波の訓練を受けた先生方がいなかったため,
「なんとなんく…だね」
ということが多かったでした.
しかし,ここでは
「〜だから,〇〇だ.」
と根拠を持って教えてもらえます.
脳波を多く見れば分かるようになるは間違いです.
体系的で正確な知識があってこそ,正しい読影ができるようになります.
正しい知識がなければ,いくら見ても正しく読めるようにはなりません.
Lüders先生のパール
Lüders先生の教えはとても価値のあるパール集です.
例えば,Lüders先生は,脳波の1枚から,患者の状況,てんかん発作の状況,発作の変化を細かく紐解くことができます.
最初は「マジックか?」と思いました.
この紐解く技術の背景には,膨大な知識と経験,緻密な理論があります.
週2回のカンファレンスで,症例を通して,Lüders先生の見方を学ぶことができます.
カンファレンスの指導方法は,ボランテイアの1人が前に出て脳波を読み,Lüders先生の指導する形です.
読影者はかなり厳密に指導されるので大変です.
私も緊張して色々間違えました.
しかし,とても勉強になります.
臨床留学への価値あるステップ
リサーチフェローの後,臨床医として働くことを考えています.
困難を伴いますが,現在の経験は臨床留学への価値あるステップだと思います.
その理由を述べます.
アメリカでのクリニカルフェローに近い経験
脳波読影特訓後のリサーチフェローの仕事は,アメリカでのクリニカルフェローに近い経験となります.
なぜなら,クリニカル・フェローと共に働いて,脳波読影の作成,回診へ参加,カンファレンスでの発表を行うからです.
患者への接触,実際の診療はありませんが,クリニカル・フェローと近い部分が多くあります.
上記の仕事に加えて,臨床研究の仕事を行います.
ここでの経験はてんかん診療のトレーニングを積んできたことに近いため,マッチングにおける1つの武器になると思います.
実際,University Hospital of Cleveland Medical Centerのプログラムにマッチした人,その他のプログラムにマッチした人々がいます.
同じ志を持った仲間
University Hospital of Cleveland Medical Centerには,マッチングにチャレンジするIMGとマッチした先生方がいます.
挑戦するのが当たり前という環境です.
一方,日本において,臨床留学する人は「はぐれメタル」的な存在です.
初期研修をした手稲渓仁会病院は特殊な病院で,そのような人々が集まったところでした.
ここクリーブランドも,変わり者のチャレンジャーが集まっている環境です.
そういった環境にいると色々と情報や悩みを共有できて,前向きに挑戦することができます.
どのような参加者は下記の記事へ
英語とアメリカへの順応
リサーチフェローの経験は,英語力やアメリカへの順応にもプラスになります.
例えば,英語ではかなり苦労していますが,少しずつ英語表現が増えたり,少しずつ聞き取りがよくなるなど,小さいけれど確実な変化がみられます.
その他に,アメリカのやり方や考え方も学ぶことが出来ます.
これらの経験は,臨床留学に適応する能力を養う要素だと思います.
数字で示すとすれば,USMLE STEP2 CSの合格とTOEFLの点数です.
リサーチフェローとアメリカ生活の問題点
上記のように良いことは沢山ありますが,その他に問題も沢山あります.
全てがバラ色の訳はありません.
資金問題
無給のリサーチフェローのため,資金が問題となります.
なぜなら,現在は貯金で暮らせていますが,もし無給が数年継続すれば借金しなくてはならない可能性があるからです.
それを防ぐため,安いアパートに車無しで住む等で固定費を減らし,なるべく娯楽費を控え,長期に留学できるように調整しています.
さらに,Clevelandは節約留学の味方です.
なぜなら,Clevelandは比較的物価が安く,University Circleの周辺には,素晴らしい2つの無料美術館,無料シャトルバス,無料の図書館,綺麗な公園があるからです.
上記の環境を上手に利用しつつ,趣味をランニングとワークアウトにシフトすることで,さらに節約になります.
不便は多いですが,結構楽しいです.
日本にいた時は散財癖がありましたが,改善しています.
アメリカ生活でのトラブル
アメリカの生活で様々なトラブルが生じたため,日本の様にスムーズにいかないのが当たり前だと思うようになりました.
例えば,入居時にペンキを塗っていてシャワーを2週間浴びれない,日用品をとられる,注文した家具が4回も配送延期になって結局キャンセル,3日毎に水シャワー,電気が止まりかける,等々沢山あります.
私にとって,毎回のトラブルが未知との遭遇です.
しかし,アメリカ人にとっては,当たり前なのかもしれません.
感情をグッと抑えて,無料の英語レッスンと思う様にしています.
これからも,きっと様々なトラブルが生じますが,冷静に1つ1つ対処していきます.
日本のキャリアの遅れ
日本のキャリア的にはマイナスになる可能性があります.
例えば,アンマッチして日本に戻った場合,卒後6〜7年目(通常3年目)で後期研修プログラムに入ります.
しかし,そのリスクを考慮した上で,アメリカでてんかんを学ぶことにチャレンジしました.
イチローが引退会見で述べていた「成功するからチャレンジする,成功しないからチャレンジしないとかでは後から後悔すると思います.やりたいならやればいい.」 という言葉が近いかもしれません.
現在,全く後悔はありません.
なぜなら,今ここで学んでいることは本当に貴重なことだからです.
マッチやアンマッチに関わらず,今ここで学んでいることはやがて必ず役に立つと思います.
遠回りしたとしても,自分にとって非常に価値あることを学べていれば,あまり問題ではないと思います.
突き詰めると,自分のコンパス「てんかん患者さんが幸せになる診療と社会の構築」があれば,それまでの道はあまり問題ではありません.
大事なのは,自分のコンパスを信じ,今この瞬間に集中して前に進んでいくことではないでしょうか.
- EEG Courseは素晴らしい教育プログラム
- アメリカ生活ではトラブルが当たり前
- 今後どうなるか分からないが今に集中して前に進み続ける