脳波、てんかんを基礎から一つ一つ学びたいけど、どうしたらいいのか分からないという方がいるかもしれません。
そういう方々のために、脳波、てんかんについて基礎から徐々に学んでいくシリーズを始めることにしました。
第1弾は「脳波の成り立ち」についてです。
「脳波はどのように生まれるのか?」を解説していきます。
この記事を通して、①脳波が生まれる過程、②脳波波形が構成されるメカニズムを理解できます。
Youtube動画でより詳しく解説しているので、是非そちらもお願いします。
- 脳波を生み出す3つの場所
- 視床:ペースメーカー
- 大脳皮質:起電力
- 脳幹:覚醒レベルの調整
- 脳波の波形は大脳皮質の大錐体細胞によるEPSPの総和とDipoleでつくられる
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脳波を生み出す3つの場所
脳波は3つの場所から生まれてきます。
具体的には、視床、大脳皮質、脳幹になります。
視床が脳波のリズムを生み出す
視床が脳波のリズムを形成しています。
心臓の洞房結節と同様に、脳では視床が脳波のリズムを形成しています。
つまり、視床がペースメーカーとなっています。
図1. 視床によるリズムの形成
図1では視床が例として4つの拍を刻んでいます。
今後、このリズムを基に大脳皮質と脳幹の関係を述べていきます。
大脳皮質が起電力となり脳波を形成する
視床から来たリズムが大脳皮質に届くと脳波を生み出します。
なぜなら、視床から来た電気信号を増幅させて同期しないと脳波として表すことができないからです。
そのため、視床のリズムに従って、大脳皮質で脳波が形成されます。
図2.大脳皮質による脳波形成
視床からのリズムが大脳皮質に到着すると4つのリズムに従って脳波を形成します。
脳幹が覚醒に伴う脳波の変化を生み出す
脳幹が覚醒に伴う脳波の変化を生み出しています。
なぜなら、脳幹は生命の維持や覚醒レベルをつかさどり、脳波にも影響しているからです。
例えば、眠くなると脳波は徐々に遅くなりなり、起きてくると脳波は速くなります。
図3.脳幹による脳波の変化
眠くなると視床と脳幹が連動して脳波が変化します。
先ほど、4拍だったの脳波のリズムが2拍と遅くなりました。
脳波の波形は大錐体細胞のEPSPの総和とDipoleでつくられる
大脳皮質で脳波は生み出されます。
その上で大切なのは、大脳皮質の大錐体細胞によるEPSP(Excitatory PostSynaptic Potential:興奮性シナプス後電位)の総和とDipole(双極子)となります。
脳波を生み出すのは大脳皮質の大錐体細胞
大脳皮質の第5、6層にある大錐体細胞が存在し、皮質に向けて軸索を伸ばしています。
細胞内はマイナスに荷電し、細胞外はプラスに荷電しています。
その他に、皮質側の樹状突起に視床からの神経線維が繋がっています。
脳波電極は皮膚の上に置かれています。
図4.大錐体細胞の簡易図
視床からの入力でEPSPが生じる
視床からの入力でEPSP(Excitatory PostSynaptic Potential:興奮性シナプス後電位)が生じて細胞外電位が変化します。
それでは、具体的に述べていきます。
視床のリズムが神経線維を伝わって皮質側の樹状突起に届きます。
そうなると、活動電位が生じてEPSP(Excitatory PostSynaptic Potential:興奮性シナプス後電位)が生じます。
そして、EPSPが生じた部分の細胞内の電位はマイナスからプラスに、細胞外の電位はプラスからマイナスになります。
一方で、深部の細胞体の細胞内の電位はマイナス、細胞外の電位はプラスのままです。
図5.EPSPの様子
細胞外電位の違いがDipole(双極子)を形成する
EPSPで生じた細胞外電位の違いがDipole(双極子)を形成します。
具体的に述べていきます。
樹状突起の細胞外電位がマイナスで、細胞体の細胞外電位がプラスになると、マイナスとプラスを形成します。
このマイナスとプラスがDipole(双極子)となります。
図6.Dipoleの形成
数百万個の神経細胞のDipoleで脳波を形成する
数百万個の神経細胞が同期してDipoleを形成すると脳波を形成します。
なぜなら、一つの神経細胞だけでは力が非常に弱いからです。
脳波は数百万個の神経細胞が同期してDipoleのマイナスをとらえて上向きの波を作ります。
脳波のY軸はプラスではなくマイナスです。注意して下さい!
図7.脳波の出現
Dipoleが無くなると脳波は元に戻ります。
図8.脳波が元に戻る様子
以上が脳波が生まれるメカニズムになります。
それでは、要点をまとめます。
- 脳波を生み出す3つの場所
- 視床:ペースメーカー
- 大脳皮質:起電力
- 脳幹:覚醒レベルの調整
- 脳波の波形は大脳皮質の大錐体細胞によるEPSPの総和とDipoleでつくられる
[参考文献]
Lara V. Marcusse et al (2016) Rowan’s PRIMER of EEG. ELSEVIER
日本てんかん学会(2017) てんかん専門医ガイドブック.診断と治療社
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