留学

クリーブランドでの脳波・てんかん診療の特訓で成長を感じた4つの理由

もし、海外で短期期間でも集中して医療技術学びたいと考えているときに
 
「短い期間で成長できるのだろうか?」
 
と考えるかもしれません。
 
 
リサーチフェローの最初の2か月間は、短期集中に相応しい脳波とてんかんの特訓でした。
 
EEG/Epilepsy Courseという2か月間の脳波・てんかん診療特訓コースです。
 
一見すると短い期間でしたが、大きく成長したと思います。
 
 
その理由を解説します。
 
要点まとめ

  1. 実践的かつ体系的に学べて臨床能力が上がる
  2. てんかん手術での仮説の立て方や合理的な考え方を触れられる
  3. 日本の10年先を行く診療をみることができる
  4. 様々な国の人々とネットワークができる
 

理由1:実践的かつ体系的な内容で臨床能力が上がる

実践的かつ体系的な訓練内容が成長させる最大の要因でした。
 
一つ一つ、具体的に述べていきます。
 
 

Lüders先生による脳波を紐解く技術指導

現代のてんかん診療を築いたLüders先生の指導と教育プログラムは、脳波を紐解いて理解するようになっています。
 
何故なら、脳波を通じて、どのような人が、どのような状態で、どのような変化の中で、どういうことが起こっているかというを理解しなければならないからです。
 
たとえば、情報の全く無い1枚の脳波から、脳波のモンタージュ(電極の配置)、年齢、意識状態、Nomal Variant、Artifact、Classification、Clinical impressionを全て推測することを求めれらます。
 
この過程を通じて、脳波を紐解く技術を習得します。
 
その結果、複雑な脳波にも応用することが可能になります。
 
 

シンプルな脳波判読方法

 
クリーブランド流の脳波判読は、システマティックかつシンプルです。
 
なぜなら、複雑な脳波を客観的に評価できるようになるからです。
 
例えば、複雑な異常所見をAbnormal ⅠからⅢの個別な所見に分類し、分類したのもを組み合わせてClinical Impressionを導き出します。
 
このように、体系的かつシンプルに分類して客観的な評価が可能になりました。
 
 
 

教育的なカンファレンス

週2回のカンファレンスは双方向的で教育的な内容です。
 
なぜなら、1枚の脳波、1つの発作ビデオに対して1時間をかけてStep by Stepで議論し合うことで、幾つもの重要な見方を学べるからです。
 
例を挙げるなら、Lüders先生のClinical Pearlになります。
 
 
発表者を徹底的に叩くようなカンファレンスではありません。
 
さらに、最後にメイン・トピック関するミニレクチャーとまとめプリントがもらえる仕組みなっています。
 
 
 

体系的な講義内容

 
脳波の部分が多いのですが、てんかん診療を体系的に学べました。
 
何故なら、てんかん診療は幅広いからです。
 
たとえば、新生児から高齢者までの広い患者層、薬物治療から手術治療、社会問題と様々な問題があります。
 
さらに、病理、放射線、栄養なども学ぶことができました。
 
体系的に学び、てんかん診療で重要なポイントを網羅できました。
 

理由2:てんかん手術における仮説の立て方と合理的な考え方に触れた

二つの目の理由は、てんかん手術における仮説の立て方と合理的な考え方に触れられたことです。
 
これはアメリカ的な合理主義的な考え方も影響しています。
 
 

てんかん手術で最も大切なのは仮説の立て方である

 
てんかんの手術において最も大切なのは仮説の立て方です。
 
なぜなら、てんかんの手術部位の正しさは手術後でないと分からないため、手術前の仮説設定が重要になるからです。
 
たとえば、MRIで病変部位が分からない場合、あるゆる情報を統合して手術部位の仮説を立てます。
 
仮説が間違えれば手術成績が悪くなるように、仮説の立て方で手術の成績が変わってきます。
 
 
つまり、いかに情報を統合し整理して仮説を立てるかがてんかん医の腕の見せ所になってきます。
 
 

合理的な考え方が新たなエビデンスを作る

 
アメリカが合理的な国であるように、診療においても合理的な考え方をします。
 
たとえば、新しい手術の治療法かつ成功率60%でも、臨床的意義が高いのならやってみる価値は高いと判断します。
 
つまり、40%は失敗するため、失敗しても想定内であったとなります。
 
そして、失敗して改善すれば、成功率65%の治療法になっているかもしれません。
 
そのようにして新たなエビデンスが構築され、新しい技術が開発されます。
 
 
一方、日本は完璧主義の国なので、リスクが高いことを避ける傾向にあります。
 
そのため、確立された安全な技術を取り入れて、それを完璧なものに作り上げていきます。
 
しかし、その間に、他の国で新しい技術が生まれてしまいます。
 
つまり、遅いのです。
 
 
あたらしい価値を築くのであれば、一定の失敗を考慮した合理的な考え方で先に進まなければならないと感じます。

理由3:日本の10年先の診療を見ることができる

肌感覚としてアメリカでのてんかん診療は日本の10年先にいる気がします。

たとえば、てんかん治療薬では第2世代のレベチラセタムが出現し、てんかん手術ではアブレーションや新しいモデュレーション治療が開発され、さらにビッグデータの活用も開始されています。

このような環境を見ていると、日本のてんかん診療の制度の遅れに加えて、てんかん治療もかなり差があるように感じます。

日本は、てんかん診療の制度の整備に加えて、てんかん治療も新たな取り組みをしていかなければならないと思います。

おそらく今後、他の分野と同様に、AIとビッグデータ、低侵襲治療が鍵になるのではないかなと思います。

つまり、アメリカのてんかん診療をみることで、日本がどのように進むのかが見えてきます。

 

理由4:様々な国の人々とのネットワークができる

EEG/Epilepsy Courseには世界中から人が集まるため、様々な国の人々とのネットワークができました。

たとえば、アメリカ、中南米、スペイン、インド、パキスタン、ケニア、ナイジェリア、トルコ、エジプト、シリア、ヨルダンなど様々です。

このような人々からその国の状況、文化、医療、考え方を学ぶことができます。

そして、多くがアメリカでのレジデンシーを考えているため、仲間でありライバルにもなります。

今後、6人は私と一緒に残って仕事をしますが、大半の参加者は自国に帰ってしまいます。

今後について

来週から本格的にリサーチフェローが始まります。

具体的にはクリニカルフェローと一緒に脳波判読をし、臨床研究に取り組みます。

今後、正確な脳波判読作成、研究を形にすること、USMLEの取得、推薦書の取得を目標に取り組んでいきます。

要点まとめ

  1. 実践的かつ体系的に学べて臨床能力が上がる
  2. てんかん手術での仮説の立て方や合理的な考え方を触れられる
  3. 日本の10年先を行く診療をみることができる
  4. 様々な国の人々とネットワークができる

このコースについては下の記事で触れています。

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