脳とライフスタイル

健康長寿のための8つの食事パターン ― Nature Medicineに発表された最新研究から ―

はじめに

「どんな食事を続ければ、長く元気に過ごせるのか?」
この問いに対して、最新の科学が答えを示しつつあります。

2025年に Nature Medicine に掲載された大規模研究(Tessierら, 2025)では、米国の看護師・医療従事者10万人以上を対象に30年間追跡し、健康長寿に直結する食事パターンが調べられました。

ここでいう「健康長寿」とは、

  • 70歳以上まで生きる

  • 糖尿病・心疾患・がんなどの慢性疾患がない

  • 認知機能・身体機能・精神的健康が保たれている
    という状態を指します。


研究で比較された8つの食事パターン

研究では、以下の8つの食事スタイルが検討されました。

  1. AHEI(Alternative Healthy Eating Index)
    野菜・果物・全粒穀物・ナッツ・魚・オリーブオイルなどを重視。

  2. aMED(代替的地中海食スコア)
    地中海食を基準にしたスコア化。

  3. DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)
    高血圧予防を目的にした食事法。

  4. MIND(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)
    認知症予防に特化した食事法。

  5. hPDI(healthful Plant-based Diet Index)
    健康的な植物性食品を重視。

  6. PHDI(Planetary Health Diet Index)
    環境の持続可能性も考慮した食事法。

  7. rEDIH(reverse Empirical Dietary Index for Hyperinsulinemia)
    インスリン過剰を避ける食事スコア。

  8. rEDIP(reverse Empirical Dietary Inflammatory Pattern)
    炎症を抑えることを目的にした食事スコア。


主な結果

  • どの食事パターンも、健康長寿を達成する可能性を高めることが示されました。

  • その中でも、AHEIが最も強い関連を示しました。


AHEI(代替的健康的食事指数)を詳しく

効果

  • AHEIスコアが高い人は、低い人に比べて健康長寿を達成する確率が約1.9倍

  • 健康長寿を「75歳以上まで」と基準を厳しくしても、2.2倍の効果がありました。

食生活のポイント

  • 多く食べる:野菜、全粒穀物、豆類、ナッツ、魚、オリーブオイル

  • 控える:赤身肉、加工肉、砂糖入り飲料、トランス脂肪酸、塩分過多

つまり、AHEIは「植物性食品をベースにしつつ、魚やナッツなどの良質な脂肪を適度にとり、加工食品や砂糖を減らす」というシンプルなルールにまとめられます。


生活の中でどう取り入れるか?

  • 朝食:全粒パン+野菜スープ+ナッツ

  • 昼食:魚定食(焼き魚・野菜小鉢・ご飯は少なめ)

  • 間食:ヨーグルト+ベリー類

  • 夕食:豆や野菜たっぷりの煮物+オリーブオイルを使ったサラダ

無理に「特別な食事」にする必要はなく、日常の選択を少しずつ変えていくことが、将来の健康につながります。


まとめ

Nature Medicineの最新研究は、食事パターンの選び方が健康長寿に直結することを示しました。
8つの食事法の中でも、最も効果が強かったのはAHEI

「野菜・魚・ナッツを多く、加工食品や砂糖を少なく」――このシンプルな原則が、私たちの未来の健康を守るカギとなります。


📖 参考文献
Tessier, A-J. et al. (2025). Optimal dietary patterns for healthy aging. Nature Medicine, 31, 1644–1652. https://www.nature.com/articles/s41591-025-03570-5