Case Western Reserve University

アメリカ・クリーブランド研究留学1年目:YWT法を用いた年間(2019年)振り返り

卒後4年目で2019年6月末にアメリカ・クリーブランドに移り住んだ1年をYWT法を使って振り返る。

結論:失敗や困難があり、不安もあるが、大きな一歩を踏んで前進した1年

要点まとめ

  • デトロイト→札幌→クリーブランドと駆け回った1年
  • 沢山の経験・学び、新しいつながり、貴重な失敗や反省を得た
  • レジデンシーへの道は厳しさが予想され、困難もあるが、諦めずにベストを尽くす

YWT法とは

日本能率協会コンサルティングが作った振り返りの方法である。

Y(やったこと)W(わかったこと)T(つぎにやること)

の頭文字を用いたもの。

KPT(Keep, Problem, Try)法というProblemを重視したやり方に似ているが、より内省(Reflection)に重きを置いている。

実際に何をして、何が分かったか、次にどうするかという年間の振り返りにYWT法が適していると考え、YWT法を用いた。

YWT法は具体的な計画立案には向いていないため、あくまでも振り返りのツールとして利用をお勧めする。

計画の立て方にはMAC法やIf-Then Ruleの利用をお勧めする。

Y(やったこと)

先ずは、何をやってきたかをタイムスケジュールと内容で振り返る。

タイムスケジュール

1月ー3月 アメリカ・デトロイト

アメリカのデトロイトにあるWayne State University/Children Hospitals of Michigan の浅野研究室で頭蓋内電極を用いた4Dマッピングの研究に携わった。

この期間中に、クリーブランドに行き、リサーチフェローの枠を交渉して獲得した。

4月ー6月 日本・札幌

卒後1-3年目に勤めた手稲渓仁会病院の系列の札幌西円山病院の神経内科で働いた。

変性疾患を診つつ、留学に向けた準備を急ピッチで進めた。

留学資金確保のため、頻繁な日当直。

 

7月ー12月 アメリカ・クリーブランド

最初の2か月間はEEG/Epilepsy Intesive Courseを受講して、脳波、てんかんの基礎を学んだ。その後、リサーチフェローとして、脳波判読、てんかんモニタリングユニットでの解析、臨床研究に携わった。

やった内容

臨床

  • クリーブランドでの講義と実践を通じた脳波判読、てんかん発作分類・解析方法の取得
  • 札幌でのパーキンソン症候群を中心とする神経変性疾患の経験
  • 留学資金確保のため、年始の忙しい救急バイトや札幌での頻繁な日当直バイト
  • 臨床留学に向けたUSMLE STEP2 CK/CSの勉強と試験予約

 

研究

  • 浅野研究室での頭蓋内のグリット電極を用いたα波やHFOの研究
  • クリーブランドでのIctal Tachycardia, SUDEPの研究
  • 2つのケースレポートや1つのレビュー執筆
  • 論文1本掲載、2本投稿中
  • アメリカてんかん学会AES2019でのポスター発表、ANN2020の抄録提出
  • 国際抗てんかん連盟ILAEの若手メンバー入り

 

ネットワーキング

  • 自分の経験を他人活かすこに加え、ビジネス(主にマーケティング)の構造を実践的に学ぶためにブログ、ユーチューブ、ツイッターを開始する
  • 各国をつないだ脳波てんかんカンファレンスを主催
  • 留学資金確保の反省から金融リテラシーの勉強

 

私生活

  • 日本からアメリカの引っ越しを経験
  • アメリカでのセットアップ
  • アメリカのポンコツアパートとの奮闘
  • アメリカ車無し生活

W(わかったこと)

わかったことを上記の内容別に振り返る。

臨床

  • クリーブランドの体系化された脳波・てんかん分類はとても分かりやすくとても勉強になった。しかし、国際分類と異なるところがあるため、今後は修正する必要がある。
  • 脳波判読、てんかんモニタリングユニットの仕事とクリニカルフェローとほぼ同様のことを学べて、てんかんの臨床能力はかなり高まった。
  • 日本でのキャリアを一旦中断したことは、やはり心配になる。留学当初は興奮してあまりきにしなかったが、冷静になり、レジデンシーアンマッチを想定すると不安になることがある。
  • 来年のマッチングは苦戦を強いられると予想。何故なら、今年受験したSTEP1のスコアが低いインド人が苦戦しているため。STEP2 CKでどれだけ挽回できるかが鍵である。来年マッチできる確率は良くて60%程度だろう。
  • 来年のマッチングでアンマッチした場合、有給のリサーチフェローの枠をゲットするか、アメリカ臨床神経生理学会とILAEの専門医を取得してアメリカでクリニカルフェローのポジションをゲットしてマッチングを続けるか。はたまた、日本に帰るかになる。何とかアメリカに残りたい。

 

研究

  • 浅野先生の教室では、トランスレーショナルの研究のやり方を経験することができてとても良い機会であった。第一線で活躍する研究者の心構えややり方も学ぶことができた。
  • クリーブランドでは、ルーダース先生による批判的吟味のやり方や独自の視点を学べた。しかし、研究デザインの絞り込みが甘い部分があるため、自分で主体的に提案修正していく必要がある。
  • 若手で臨床研究に積極的に取り組む津島先生やパキスタンから来た秀才Arsalanから、どのようにPublicationを増やしていくかを学ぶことができ、なおかつ共同執筆もできた。彼らのようにどん欲に機会をうかがい、積極的にPublishするやり方は非常に参考になった。
  • リサーチフェローでおいて無給はおススメしない。なぜなら、日本の科学技術崩壊の分析同様に、良い研究にはグランドに支えられた研究従事者数と人件費の確保が基になっているからだ。グラントが無い=インパクトのある研究が出来ていないと言える。実は、僕が来てからグラントを持っていた先生が異動してしまった。さらに、無給は精神的にとても良くない。予想以上に貯金は速く減っていく。無給を舐めていた。

 

ネットワーキング

  • ブログやユーチューブには予想以上に時間がかかるため、USMLEが終わるまではペースを落とす。2020年7月からは今までの失敗を基にやり方を変えつつ時間を増やしていく。
  • てんかんに関わる若手医師・若手医療従事者と多くの関りができたため、今後もこの繋がりを強めていく。さらに、オンラインでの勉強会の構築を進める。

私生活

  • 異国での生活には大変なことが多く地味な生活
  • 日本からアメリカの引っ越し、されにセットアップは本当に大変だった。さらに、アメリカ生活はトラブル続きで、アパートの様々な故障、騒音問題など苦労は絶えない。
  • 身近な人も犯罪に巻き込まれているため、アメリカはやはり危険。
  • 車無しでも生活できる
  • 世界から日本をみると、良い点、悪い点が色々と分かり、考え方や捉え方がかなり変わった。自分の中の常識が変わったことはよかった。特に生産性やワークライフバランスの違い、日本の将来起こる問題を学べた。日本の将来は危うい。
  • クリーブランド美術館は無料かつ素晴らしい作品があり精神の癒しの場
  • ミニマリストが洗練され、勉強、ランニング、電子書籍の読書、美術館がルーティーン化した。

T(次にやること)

  • 継続的な脳波判読とてんかん発作解析でスキル向上
  • SEEGとグリット電極の解析、てんかん手術の仮説構築スキル向上
  • メインプロジェクトであるIctal tachycardiaの論文掲載、その他の3本の論文掲載
  • USMLE STEP2CS合格、 CK 250点取得
  • アメリカ臨床神経生理学会とILAEの専門医取得
  • 強力な推薦状をそろえてNeurologyのマッチングに応募
  • リモートワークによる安定したベーシックインカム
  • 2020年7月からのブログ、ユーチューブの再構築と2020年中に収益化
  • オンライン脳波てんかん勉強会のグループ化

 

失敗や困難を経験し、不安はあるが、大きな一歩を踏み出して前進した1年だった。

では、要点をまとめる。

要点まとめ

  • デトロイト→札幌→クリーブランドと駆け回った1年
  • 沢山の経験・学び、新しいつながり、貴重な失敗や反省を得た
  • レジデンシーへの道は厳しさが予想され、困難もあるが、諦めずにベストを尽くす