「異常波はどのように拡がるのか?」と思うことがあるかもしれません。
その拡がり方を知ることは、今後解説予定の Onsetの同定で大切になります。
それでは、Potential Fieldsという脳波の拡がりを解説します。
要点まとめ
- 細胞外電位(EPSP+IPSP)の総和はFieldを形成する
- FieldはOnsetから徐々に減衰して同心円状に拡がる
- 最終的に楕円形になることが多い
- Potential Fieldsの考え方はOnsetを分析する(Localization)際に必要なる
Potential Fieldsとは
Potential Fieldsとは細胞外電位の総和の拡がりです。
なぜなら、通常の脳波は細胞外のEPSP(興奮性シナプス後電位)の拡がりを持ち、異常波は細胞外のEPSP+IPSP(抑制性シナプス後電位)の拡がりを持つからです。
具体例を挙げると、部分発作のSpike-and-Slow waveが出現する際、Onset(発火点)から徐々に同心円状に拡がります。
そして、拡がりはOnsetから遠くなるにつれて減衰します。
最終的に、楕円のような形になることが多いです。
良く分からなくても安心してください。
これから、図を用いて解説します。
具体例1:右側頭部からの拡がり
T(Temporal)8で、-80uVの異常波が出現しました。
次にその波が-60uVに減衰しながら、F(Frontal)8に到達します。
さらにその波が-40uVに減衰しながら、Fp(Frontal Pole)2とP(Parieatal)8に到達します。
最終的に、その波が-20uVに減衰しながら、O(Occipital)2に到達します。
まとめると、T8(右側頭部)から出現した波が徐々に減衰しながら、Fp2(前頭極)とO2(後頭部)まで拡がりました。
このように、異常波はFieldを形成して、徐々に減衰しながら同心円状に拡がります。
そして、楕円のような形になります。
具体例2:右前頭棘からの拡がり
Fp2で-60uVの異常波が出現しました。
次に-40uVに減衰してF8に到達しました。
最終的に-20uVになり、T8に到達しました。
このように、Fp2から発生した異常波がF8、T8と拡がります。
具体例3:考えづらい例
先ほどまでの例とは反対に、考えづらい例を説明します。
基本的に、Fieldは徐々に減衰して同心円状に拡がります。
そのため、Fp2のOnsetにもかかわらず、F8とT8に拡がりが無く、O2に急に出現するというのは考えづらいです。
要点まとめ
- 細胞外電位(EPSP+IPSP)の総和はFieldを形成する
- FieldはOnsetから徐々に減衰して同心円状に拡がる
- 最終的に楕円形になることが多い
- Potential Fieldsの考え方はOnsetを分析する(Localization)際に必要なる
訂正:図中のOcipitalはOccipitalになります。
[参考文献]
-Lara V. Marcusse et al (2016) Rowan’s PRIMER of EEG. ELSEVIER
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