日本人類遺伝学会第70回大会に参加してきました。
昨年は参加できなかったため、2年ぶりの参加となります。
今回は自分自身の「Prediction of Epilepsy Using Machine Learning on Integrated Polygenic Risk Scores and Perinatal Data」の口演発表もあり、無事に終えることができました。私はポリジェニックスコア(PRS)を用いた研究を行っているため、多因子疾患のリスクモデリングを中心に、多くの発表を聴講しました。
中でも特に印象に残ったのは、東京科学大学の高橋先生による「12誘導心電図とPRSを組み合わせた発作性心房細動の予測」に関する研究です。通常の12誘導心電図という、一見すると人の目では分かりにくいデータから、どこまで将来リスクを予測できるのかという点が非常に興味深く、脳波のresting state解析にも通じるものを感じました。
私たちのグループでも、PRSを含めたマルチオミクス検査を実施しており、さらに脳波との統合にも取り組んでいるため、この研究は自分たちの方向性と強く重なるものでした。
遺伝という「素因的リスク」に加えて、脳波や心電図といった「現在の状態を反映する動的バイオマーカー」を組み合わせることが、今後の予測モデルにおいて最も重要になるのではないかと改めて感じました。てんかん領域でいえば、やはり脳波は極めて重要ですし、加えてメチル化などのエピゲノム情報も今後ますます面白くなってくる分野だと思います。
また、岐阜大学の大井先生による「複数のPRSをステップワイズで選択していく手法」も非常に興味深い発表でした。約400個のPRS候補から10個程度に絞り込んだときに最も予測精度が高くなるという結果で、「PRSをどう使うか」という実装の視点において、大変勉強になりました。
個人的には、ミトコンドリア機能と精神疾患との関連もホットトピックだったため、この分野の最新知見を学べたのも収穫でした。
研究とは少し異なる話題になりますが、多くの医療政策に関わってこられた小児科医・参議院議員の自見はなこ先生の講演も非常に印象的でした。講演後には、私たちが進めている「perple」の取り組みについて直接お話しする機会もありました。今後、保険収載や制度設計の観点からも、意見交換をさせていただければと考えています。
また、いつもお世話になっている研究者の方々とも久しぶりに直接お会いでき、有意義な情報交換ができました。学会はやはり、研究内容だけでなく、人とのつながりを再確認できる貴重な場だと改めて感じました。
今回の学会で得られた多くの刺激を、今後の研究と臨床、そして事業化にもつなげていきたいと思います。
