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はじめに
「食べ物で脳は変えられる」――そう主張する書籍は増えています。
実際、食事や栄養を変えることで、てんかん、片頭痛、認知症、うつ病、統合失調症が改善・寛解したというエビデンスが出てきており、脳に与える影響の大きさが明らかになっています。
今回は、脳神経内科医として実際に読んだ数多くの本から、おすすめの5冊をランキング形式で紹介します。
この分野はまだ発展途上で、エビデンスが確立していない部分も多く存在します。本によって主張が異なるのは当然であり、複数の視点を比較し、相対的に理解することが大切です。
🥇第1位:『脳が強くなる食事』(マックス・ルガヴェア著)
ジャーナリストであり神経栄養学の専門家でもあるマックス・ルガヴェア氏によるベストセラー。母親の認知症をきっかけに、脳と食の関係を徹底的に研究した著者が、最新の科学と実践を融合させた一冊です。
医師ポール・グレワル氏との共著で、臨床経験をもとに構築された「ジーニアス・プラン」を提唱。
糖と脂質の脳への影響を科学的に解説し、血糖値の安定・抗炎症・神経保護を軸に、脳を一生守りながらより賢く幸せに生きる食生活を具体的に紹介しています。
科学的根拠と実践的アプローチの両立という点で、本書は良い入門書といえます。
🥈第2位:『ハーバード式 脳を最適化する食事法』(ジョージア・イード著)
ハーバード大学で初めてメンタルヘルス治療に栄養学的アプローチを導入し、成果を上げてきた精神科医ジョージア・イード博士による一冊。
うつ病や発達障害、認知症などの精神疾患を「脳の栄養失調」と捉え、20年以上の臨床経験から得られた知見を体系的にまとめています。
本書では、現代の栄養学に潜む矛盾を指摘しながら、脳を健康に保つための具体的な食事法とレシピを紹介。
「静かなるパレオ」「静かなるケトン」「静かなる肉食」という3つの食のフローチャートを作成し、血糖値スパイク・炎症・ミトコンドリア機能の観点から脳の最適化を解説しています。やや専門的な内容ですが、精神疾患を代謝の問題として捉える新しい視点を学べる貴重な本です。
🥉第3位:『脳の寿命を延ばす「脳エネルギー」革命 ブドウ糖神話の崩壊とケトン体の奇跡』(佐藤 拓己 著)
「脳のエネルギー源はブドウ糖だけ」という従来の常識を覆す一冊。
神経科学者である著者・佐藤拓己氏は、脳の老化・うつ病・認知症の根底にはニューロンのエネルギー不足があると指摘します。
本書では、ヒトの脳の進化を「エネルギーの視点」から読み解き、ミトコンドリア代謝・インスリン・ケトン体の相互作用を丁寧に解説。
特に、ケトン体を効率的に使うことで脳の老化を遅らせるという主張は、近年の神経代謝研究とも一致しています。
さらに、鳥類の高い運動能力や長寿命をエネルギー代謝から説明する章もあり、進化生物学の観点からも読み応えのある一冊です。
第4位:『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』(デイヴ・アスプリー著)
「バターコーヒー」で世界的に知られるデイヴ・アスプリー氏による自己変革の書。
本書は、脳のパフォーマンスを最大化するバイオハッキング戦略です。
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糖質を制限し、脂質を主燃料にする
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カフェインとMCTオイルを活用して集中力を維持
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炎症源(グルテン・植物油・人工甘味料)を徹底的に排除
科学的精度にはばらつきがありますが、実践性は抜群。
「脳をビジネスツールとして鍛える」視点からも読まれる一冊であり、現代的な脳食事法の入り口になります。
第5位:『超一流の食事術』(アイザック・ジョーンズ著)
機能性医学と神経科学を融合し、「最高のパフォーマンスを発揮するための栄養戦略」を体系化した一冊。
著者はトップアスリートや経営者への栄養指導経験をもとに、代謝の最適化とストレス耐性の両立を提案しています。
「グルコースバーニング(糖依存)」から「ファットバーニング(脂質代謝)」への移行の重要性をわかりやすく解説。
特に油の選び方や、腸内環境を整える発酵食品・ミネラル摂取の方法など、現代型ストレス社会に適応した実践的アプローチが特徴です。
一流の食事とは、単に“何を食べるか”ではなく、「思考と行動を支える環境設計」だというメッセージが印象的です。
まとめ:脳を変える食事、共通点
5冊に共通していたキーワードは、
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精製された糖質・過剰な糖質を避けること
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加工食品を減らすこと
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良質な脂質(魚・肉・オリーブオイル・MCTなど)を摂ること
- 食物繊維・ポリフェノール・微量栄養素を摂取すること
つまり、脳のパフォーマンスを上げるには「何を食べるか」だけでなく、「どう代謝させるか」が重要。これらの本はその“代謝のリテラシー”を高めてくれます。