てんかんで最も使われている検査が脳波検査です。
では、「なぜ、てんかん診療で脳波検査をするのでしょうか?」
なぜなら、脳波はてんかんに特有の現象をとらえられる安全な検査だからです。
しかしながら、脳波検査は弱点もあります。
それでは、てんかん診療における脳波検査の有用性と弱点を述べます。
- 脳波検査はてんかんの確定診断に有用である
- 脳波検査は副作用が無く、カンタンで安い
- 弱点:脳波判読者の能力に依存する点、一回の脳波では限界がある点
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Contents
脳波検査はてんかんの確定診断に有用である
てんかん診療の中で、脳波検査をする最大の理由は確定診断に有用だからです。
では、なぜ、確定診断に有用かを述べます。
脳波は脳の電気的活動をとらえる
脳波は大脳皮質の大錐体細胞の電気的活動をとらえています。
なぜなら、脳は電気的活動を基に情報のやりとりをしているからです。
例えば、手を動かすとき、手の動かす脳の部位の電気的活動が変化します。
つまり、脳波は脳がどのように電気的な活動しているかを見ているのです。
最初に述べたように、特に大脳皮質の大錐体細胞の電気的活動です。
一方で、MRIやCTといった画像検査は脳の構造を反映します。
てんかんは脳の異常な電気的活動によって生じる
てんかんは神経細胞の異常な電気的活動によって生じます。
なぜなら、様々な原因によって、神経細胞が通常の電気的活動を超えて過剰に興奮したり過剰に静まったりするからです。
例えば、てんかんに特異的なSpike-and-Slow wave (棘徐波)は突発性脱分極変位と過分極相によって形成されます。
このように、てんかんは神経細胞の異常な電気的活動が原因となっています。
脳波はてんかんの異常な電気的活動をとらえられる
脳波は、てんかんの異常な電気的活動をとらえられます。
なぜなら、脳波は神経細胞の電気的活動をとらえてているため、異常な電気的活動をとらえられるからです。
そのため、脳波のてんかん診断における特異度は90%となっています。
これは、脳波でてんかんに特有の異常波があった場合、てんかんと確定診断できる確率が高いこと意味します。
しかし、特異度90%は脳波を読む人の能力によって変わってしまいます。
なぜなら、脳波は様々なノイズ、異常にみえる正常波があるため、読み間違える可能性が高いからです。
つまり、脳波判読者がきちんとしたトレーニングを受けていない人でないと有用ではありません。
そのため、私も日々トレーニングをしています。
一回の脳波検査だけでてんかんを否定できない
一回の脳波検査だけでてんかんを否定できません。
なぜなら、一回の脳波検査は感度が低い(20-50%)からです。
言い換えると、偽陰性が高いという意味です。
例えば、てんかん波の発生頻度が低い場合、30分の検査ではとらえることができないのです。
そのため、病歴、家族歴、身体所見、その他の検査を複合して考えて、てんかんが疑わしい場合、一回の脳波検査で否定することはできません。
感度を上げるために、長時間の検査、取るタイミングや回数の変更をしなければなりません。
脳波検査は簡単な検査
脳波検査は、他の侵襲的な検査に比べて、30分間横になっているだけの簡単な検査です。
具体的いうと、脳波の電極を付けて、目をつぶって横になっている検査です。
ただし、少し大変なこととして、頭の電極で髪型が崩れたり、過呼吸検査、フラッシュライトでチカチカすることが挙げられます。
脳波検査は副作用がない
脳波検査は基本的に副作用はありません。
たとえば、CTでは放射線被ばくがあり、MRIでは体内の金属に変化をもたらすこともあり、カテーテル検査は皮膚を切開したりします。
脳波検査ではこのような副作用はありません。
しかし、脳波検査の誘発試験(過呼吸や光刺激)によっててんかん発作が誘発されることがあります。
脳波検査は比較的安い検査
脳波検査はMRIやCTと比較して安い検査です。
なぜなら、機械の値段が安いからです。
下記の表をみると、CTの53%、MRIの41%の値段になります。
神奈川脳神経外科クリニックWebpageより引用
- 脳波検査はてんかんの確定診断に有用である
- 脳波検査は副作用が無く、カンタンで安い
- 弱点:脳波判読者の能力に依存する点、一回の脳波では限界がある点